その土地ならではのもてなし言葉が、 こころの距離を縮めてくれる。 年間を通して日本の北から南までコンサートに呼んでいただく機会が多いのですが、その土地特有の人との接し方・もてなし方など、いつも新しい発見が多く新鮮です。「ようこそいらっしゃいました」という挨拶も、お国言葉で言っていただけるとうれしいですね。よそよそしさが抜けて、目の前にいる人と一瞬にして心が通じ合うというか、心の距離が縮まるような気がします。そういった意味でも、島根の人の持つ言葉のやわらかさというのは良いですね。遠くから来た旅人を、ほっとなごませる響きがあります。 昨年旅した有福温泉で、ぶらりと土産物屋に立ち寄ったのですが、喫茶コーナーのストーブで店のおばちゃんが鏡餅を割って焼いていたんです。おばちゃんは、僕も含めてそこに居た5人ほどの客みんなに、焼けたそばから餅をふるまってくれたんですね。お代わりもしきりに勧めてくれて。気さくなおばちゃんも愉快だったし、餅も本当においしかった。僕は、旅先で風光明媚な景色に出会うと真っ先に「うまそうだな」と思うんです。美しい海を見ると、「魚がおいしいんだろうな」、美しい森に行けば「山菜やキノコが採れるんだろうな」という風に。だから、豊かな自然に恵まれた島根では期待が裏切られることはありませんでした。その土地ならではのおいしい食べ物に出会う喜びは格別です。それも土地の人が日常家庭で食べている素朴な料理。地元の人は遠慮して出し渋るけど、僕にとっては“ここでしか味わえないご馳走”なんです。
島根そのものを 『しまね図鑑』の取材を終えた後に立ち寄った松江の「小泉八雲記念館」は印象的でした。著作本では知り得なかった八雲の姿が垣間見えて、収穫がありましたね。そして、その隣りにある「田部美術館」も素晴らしかった。古さの中に新しさがあるというか、100年以上前の時代に人の手で創り出された焼き物の形が、現代のモダンさにつながっているということに感動を覚えました。また、取材の途中に訪れた「石見銀山」。ここでは名物のそばを食べるのが目的だったけれど、大森町の町並みを歩くと、銀山のなごりを残すブリキ屋さんや昔の日本家屋をブティックやギャラリーに改造した一角がありました。こういった場所が、主要都市じゃないところに存在していることの凄さ、変に都会的ではなくて、“その土地なりの個性”が打ち出されているところに惹きつけられました。まさに「あそこでしか出会えないぞ、行ってみろよ!」と友達にも薦めたくなるほど。「石見銀山」のように、その土地の歴史や文化、そして自然の美しさを大切にしながら地域の人たちが町づくりを楽しんでいる。そんな気風に出会えることが、島根の見どころのひとつですね。(談)
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