| 知事対談 | 映画「アイ・ラヴ・ピース」にみる島根の魅力 |
島根に息づく譲りの精神 大澤 私が2年の間に何回も島根に通っていろいろな方と接触する中で思ったことは、人情の機微にあふれたとか、母親のところへ帰るような気持ちとか、島根県はもっと人情味を強く押し出してPRした方がいいということです。例えば、アフガニスタンの撮影は非常につらかったけれど、忍足くんはアフガニスタンにまた行きたいと言うんです。やはり、アフガンの人たちと接するうちに何かあったんでしょう。そこはすごく大事です。知事 お互いに響き合うものがあったんでしょうね。島根県に初めて来た人でもう一度来たいという人が多いのは、風景や歴史文化、温泉などの要因の他に、細やかな人情がありますから、先ほどおっしゃったように、お母さんの元へ帰るような温かみなどを大いにPRしたらいいかもしれません。 大澤 実は撮影の前に、アフガンの少女がホームシックにならないかと心配していたんですが、結局そんな心配もなく最後には、「日本人はどうしてあんなに優しいんだろう」と言ってくれて、うれしかったですね。島根の人たちが特に優しくて、大森という町が本当に居心地が良かったからだと思います。 知事 それはうれしいですね。島根県の人は引っ込み思案とも言われますが、非常に親切で情に細やかなところがあり、争いを好みません。大国主命の国譲りの神話が象徴するように、戦闘的でなく話し合いによって解決するという点を少女も気づいてくれて、心が通じ合ったんじゃないかと思います。 大澤 映画には不思議な波及効果があり、この映画はアフガニスタンの子どもと日本の子どもとの交流が始まるきっかけにもなりました。大陸でつながっている国や地域では、文化も言語も宗教も違うところがいっぱいありますが、日本の場合は島国でそんなに違いがありませんから、なかなか違いを認めづらいという部分があります。違いをお互いに認め合い、相手の立場を理解することはすごく大事で、それは島根県の譲りの精神と同じです。相手をよく知って違いを認め合うことは対話や交流をしないと生まれませんが、争いや戦争に至らない唯一の人間の知恵です。悲惨な戦争が起こらないために何をすればいいのかということに最大のエネルギーを傾注すれば、平和な世界が一歩近づいてくると思います。それには子どもの力が大切で、必ず将来の平和につながりますから、この映画がきっかけになってくれればいいと思っています。 知事 出雲の地はもともと八百万の神々を祭る風土で、山川草木いたるところに神が宿るということはそれぞれの役割を持っているということですから、長い間に譲りの考え方が身についてるのかもしれません。ところで今回の映画は、全編にわたって字幕と音声ガイドが付いています。監督の目指されるバリアのない映画作りとはどういうものですか。 大澤 日本の憲法には、「すべての国民は等しく文化を享受する権利を有する」とありますから、例えば映画なら、障害があろうがなかろうがみんなが等しく分かるように作るということになると思うんです。ですから、障害のある人たちには我慢してもらうのではなく、見たい人にはきちんと見ていただける環境を整えるのが我々の仕事で、これも相手の心を思いやるという一つの譲りの精神だと思います。しかし、実際には作業的な時間とお金がかかりますから、みんな必要だと分かっていても二の足を踏むというのが現状です。今回の映画で、ハートフル・ウィングという副音声の会社が松江市に立ち上がり、映画史上初めて製作の時点から関わりました。例えば、10数人が手話で話をしているところがあり字幕も入りますが、それでは目の見えない人は分かりませんから音声が必要です。つまり、10人なら10人の役を全部それぞれの声優が、セリフにしたものを演じるわけです。また、ろうの方がすべて手話ができるとは限らないので字幕が必要です。時間はかかりますが、いずれは日本映画に日本語字幕が入るのは当たり前だというようになると思います。 知事 確かに、字幕も副音声も入り、いろいろな人に理解されることが非常に望ましいことです。そういう視点は、私どもが公共の建物を建てたりいろいろなことをやる場合にも、心しなくてはいけないことです。 100万人鑑賞を目標に、次なる夢に向かう 知事 これからの上映予定はどういうふうになりますか。 大澤 島根県を先行して、全国の映画館や公共施設などで上映し、平成16年の2月から3月くらいがピークになると思います。1年から1年半をかけて小さな町や村でも上映していただくよう最大限努力を払いながら、百万人の方に観ていただきたいと思っております。また、海外の映画祭にもアプローチをいたします。 知事 たくさんの人たちが支えて協力して出来上がった映画ですから、大ヒットすれば頑張ってくれた人たちも本当にうれしく誇りに思うでしょう。私も、今後もこの映画のPRに努めたいと思います。次の構想はどういうものですか。 大澤 一つには環境保護士を取り上げ、屋久島あたりを舞台に、地球は皆の共有財産だから大事にしようというテーマを考えています。それから、本来は歌舞伎発祥400年の昨年なら良かったんですが、5年計画ぐらいで、日本の歌舞伎界に協力していただいて出雲の阿国を取り上げられればと思っています。例えば、出雲市の出雲ドームに四条河原のセットを組み、地元の人にマゲをつけてエキストラになってもらったり…。時間をかけて構想を練り、日本の映像文化財として残るようなものを作りたいと思っております。 知事 期待しております。実現すれば私どもも応援したいと思います。「アイ・ラヴ・ピース」の大成功を祈りまして、これからも協力させていただきます。今日は本当にありがとうございました。 |
![]() |
ストーリー 島根県とアフガニスタンを舞台に義肢装具士を目指す聴覚障害の女性と、地雷で片足を失ったアフガニスタンの少女との心の交流を描いた物語。戦争の苦しみから心を閉ざしてしまった少女が、島根の豊かな自然や人々とのふれあいの中で心の傷を癒していく。 監督:大澤豊 出演:忍足亜希子 林泰文 アフィファ 三船美佳 佐藤康恵 宍戸開 山本圭 星由里子(友情出演) 酒井和歌子 田村高廣(特別出演)
|
| 知事対談 | 映画「アイ・ラヴ・ピース」にみる島根の魅力 |
| 前へ | |
| |
|
50号indexへ |
|